こんにちは。
花saku 編集部の大下直子です。
文様のことを書き始めて4回目が終わりました。
折に触れ、文様のことはたまに書こうと思います。
なんせ、ゴールがないほどたくさんの文様があり、
それらの一つひとつにいわれや物語やエピソードなどがあるのですから、キリがありません。
ライフワークのように綴っていけたら……、
なんて5月に4回ほど文様のことを書いて、
そんなことを思いました。
お付き合いいただけるといいのですが……。
といいつつ、今日は、それとは別のことを書かせてください。文様のことはまた別の機会に。
日本らしいジメジメとした季節がやってきました。
私は、梅雨入りの前日まで、「梅しごと」に追われていました。
そして「梅しごと」が始まると「夏じたく」という言葉が自動的に浮かんできて、
この二つはいつも私の中ではセット。
幼い頃の母や、近所に住んでいた祖母や叔母たちの忙しそうな姿がとても印象深く記憶に残っています。
最近、思うんです。子どもの頃の鮮烈な印象。
大人にとっては当たり前のことでも、子どもには衝撃的だったり、
とても印象深かったりするものなのだなと。
年中行事、通過儀礼、どれも大事に、真摯に向き合わねばと思う理由のひとつです。
さてさて、本題に戻りましょう。
「梅しごと、夏したく」は、とても大変で面倒くさいんです。
母たちが天袋から行李(こうり)を取り出し、
畳の上で冬物と夏物を入れ替えたり、建具を夏仕様にしたり、
絨毯や座布団をい草に換えたり、
大叔母は茶托や客茶碗なども夏物に替えていました。
和だんすは、夏の着物を点検したりして、
広げては畳んだり、つるしたりと手際よく働いていました。
額を汗で光らせながら忙しそうに働く母たちのあいだを走り回っていた幼い頃。
活気づいている母や祖母たちを見ると子どもの私も
なぜかテンションが上がってはしゃいでしまうという……不思議な「活力の拡散」。
私にはとても大切な記憶の一つです。
コロナ禍のこの記憶、大人になったとき、子どもたちはどんな風に思い出すのでしょう。
今年はコロナウィルスの感染拡大の影響もあって、
ステイホームが長かった。
特に花粉症の私は、窓を開け放つ季節の到来は、
花粉の煩わしさを忘れられるシーズンでもあり
いっそうすがすがしく感じられるものでしたが、
大きな行事が中止になっているので
ユックリと梅しごとをすることができました。
ステイホームも悪くない!
「梅しごと」といっても梅だけではありません
山椒の実
山椒やらっきょうや新生姜(しょうが)の季節でもありますので、
まず手始めは山椒とらっきょう。
今年はらっきょうは甘酢漬けと、塩漬けの2種類にしました。
山椒は、サクランボのように二個がセットになっています♪
この細い枝がついたまま常備菜にしておくと食感が悪くなるので、
細い枝から小さな実をとります。これまた面倒臭い。
親指の爪と人差し指の腹を使ってプチンプチンとはずします。
無心でこういうことをすると、気分スッキリ。
ストレス解消になっていたりして、ちょっと書道と似ているのが
面白い。
酒と醤油で煮て、一年中お料理に使いますよ〜♪
新生姜は、夫の大好物の紅ショウガ(赤い紫蘇で色づけするので実際はピンク生姜)と、
甘酢漬けと、味噌漬け。甘酢漬けはいわゆるお寿司屋さんのガリですね。
そして味噌漬けは、とても好きでよく買ってくる田村屋さんのお味が目標。
ご飯もビールもお酒もなんでもぐいぐい進む絶品です。
巨神兵に似ている新生姜(笑)
赤しそに漬けた新生姜
合間に、ドクダミの化粧水も漬けました。
少しだけ干した後茎から葉と花だけを摘んでホワイトリカーに漬けておきます。
一年くらいするとドクダミのエキスがすっかり出ますが、8月には使えます。
虫刺されやあせもにも。(使う前に少しだけグリセリンを入れます)
梅は、桐生の機屋さんが庭にできた梅を送ってくれました。
なんと9.5㎏も\(^O^)/
梅干しが5㎏。梅酒はホワイトリカー(焼酎)と、ブランデーの2種類を2升ずつ。
あとは梅シロップにして義母の施設へ届けます。
こんなのが庭でたくさんとれるのはうらやましい
梅は、爪楊枝で黒いへたを一つずつポイッポイッと取り除くのが
面倒なんですがやっているうちに楽しくなってくるのがこれまた不思議。
そんな中、今年はアメリカンチェリーもフルーツビネガーに。
本当は完熟の佐藤錦でやりたいところですが、
我が家のお財布が空っぽになっても間に合いませんのでアメリカンチェリーで。
らっきょうも、生姜も、ドクダミも、梅も漬けている間、一切目減りしないんですけど、
サクランボはどんどん減りますね〜〜〜〜〜。
なんて言うのか……その……、私の口の中へと消えていきます。
予定よりも大分少ない量になってしまいました。
とっても面倒くさいことをしながら、いろいろなことを考えるにつけ、
どうも、着物の出し入れとか、着る前の準備や、着たあとの始末など、
面倒くさいことの中にとても楽しいことが隠れているんじゃないかと改めて思いました。
たまらなく楽しくて、とても幸せな時間を過ごすことができて、
色々な発見もありました。
母たちが、とても大変な季節の仕事をしながらも、
なぜか生き生きと活気づいて見えたのもきっとそのせいなんじゃないかと。
なんでもカンタンに、楽に、合理的にすることが良しとされている今の生活様式。
「新しい生活様式」が生まれ育っている今、
面倒くさいことを代わりにやるサービスはますます加速し、次々に生まれ、
そして充実していきます。
カンタンになったり楽になったりすることは良いことなのだろうと思いますが、
どうも、本当に楽しいことは大変なことの中に隠れているんじゃないかしら?
少していねいにもやしの根っこをとるとか(根っこのとれたもやしも売っていますが)、
サヤエンドウの筋を取るとか、大変だけど、大変な分、
どんな味付けにしようか考えたり、
出来上がったお料理を食べて微笑む大切な人の笑顔を思い浮かべたり。
着物を広げながら外出する前のコーディネートにあれこれと悩むのもまた、
着物ならではの面倒くさいことの中に隠れている
たくさんの楽しいことが見つかる瞬間でもあります。
面倒くさいことをやってみませんか?
ていねいに暮らしてみませんか?
そんなことを思った梅雨入りでした。
ちなみに茶色い梅干しは、友人のクミさんが送ってくれるのが絶品で、
どうやってもクミさんの梅干しのほうが美味しいので、
私の梅干しは紫蘇に付けます。
小満(5月)頃から、毎朝一個ずつ食べます。
クミさんの梅干しは美味しいので、
持ち歩いたりお弁当に入れたりおむすびにしたりします。
書いているだけでつばが出てくる〜〜〜〜
さてさて『花saku』の6月号は半幅帯の特集です。
お陰様で大反響をいただいております♪
大人の半幅帯も新しい生活様式かも〜〜〜\(^O^)/
浴衣の半幅帯でホウキで昭和のお掃除なんかしてみたら、
いつもは気づかない何かがそこにあるかもしれませんね。
(いつもはルンバにお願いしています)
さて、私の夏じたくの仕上げは……こちら。
ぶた蚊遣りじゃなくて、トトロon金魚蚊遣り(笑)
そして、私が持っている着物の中ではダントツで涼しい、
新潟の小国の「くるまや工房」の柿泥夏紬などを確認です。
涼しさトップクラスの柿泥の紬に、下平清人先生のきんとん雲帯(私が名付けた)
リンク貼っておきましたが、くるまや工房さんのサイトの
トップページの写真、実は私が撮りました(どや顔)
すてきなご一家で、ここを訪ねると里帰りをしたような気持ちになれます。
大好きなところのひとつです。
さぁ、皆さんの夏じたくは進んでいますか?
私はまだまだ野望があって、毎日忙しく、
とても面倒臭いことを楽しんでいます。