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花sakuブログ

刀折れ矢尽きる……(日本の文様考察(その3))
2020年05月25日

こんにちは。

saku 編集部の大下直子です。余計な話が多いからちっとも進まないシリーズ(笑)ですが、
余計な話の方が反響が多いというなんとも複雑な心境。

最後の最後まで頑張っていた北海道と首都圏の「緊急事態宣言」が解除です。
いや、ほんと長かったです。
テレワークを始めた頃はまだちょっぴり出勤してみたり、
出張してみたり……でしたがコートを着ていましたからね。

今日は半袖のTシャツにモンペで窓を開けてパソコンを打っています。
爽やかです。それだけ季節が進んだ。
これは、誰もが歯を食いしばって頑張ったということの結果ですよね。


東京(会社)と千葉(自宅)は江戸川を挟んであっちとこっちですが、
「越すに越されぬ大井川」(箱根馬子唄)ならぬ、「越してはならぬ江戸川」でした。
コロナウィルスがなくなったわけではなく、感染者の数が一定の水準に達しただけのこと。
これからも細心の注意をしていく必要があります。
緊張感を持続するというのはとても大変なこと。自己も仕事もコントロールが大事だとつくづく思います。


さて、そんな中、こんなタイトルで申し訳ないような気がしますが、
私、大変なことになりました。コロナウィルスの感染拡大ではなく、
いや、もちろんそれが最も大変なことなのには変わりないのですが……
よく、闘う手段、物事に立ち向かう手立てがもういよいよなくなってしまったことを「刀折れ矢尽きる」と申しますが、
長く続いたテレワーク中、もっともよく見える愛用のメガネから突然レンズが外れてしまいました。

メガネ折れやる気失せる私です。

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どうすんだ!

さて、いっこうに進まない文様のお話しですが
(ネタはうなるほどあるが……そもそも、こんなことを書き始めちゃって……
 いつやめればいいのか タイミングが分からない笑)

前回、菖蒲や杜若のお話をして、やる気満々いざ勝負! 
というところで終わりましたので、勝負と言えばトンボ。
というわけで(こじつけたな?)とんぼから。


とんぼ

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勝ち虫とよばれるとんぼ。まっすぐ前にだけ進むとんぼの姿から、
そう呼ばれるそうですが……あんまり後ろに飛ぶ虫は見たことがないと突っ込みたくなりますね。
一応、曲線ではなくて直線的な飛び方ってことらしいです。
「やーーー」って言いながら突き進んでいくイメージでしょうか?

そんなことから戦国武将の兜にも図案として取り入られてきました。
かの武田信玄は、戦争をするとき、とんぼの飛んでいる時季を選んだのだとか?
それは稲作が終わらない限り、戦争をすると食料が底をつき、
結果として破れることを知っていたからだそうです。

 

日本に天下太平の世が訪れるまでは、戦となれば農民も鍬を槍に持ち替えて共に闘いましたから、
農繁期には戦争などもってのほかだったのかもしれません。

 

先日、日課の散歩の途中で糸トンボのすごくキレイな子を見つけました。
これをスマホで撮れるまで、ジュンサイ池のほとりでじーっとしていました。動かざること山の如し! 
熱帯魚のネオンテトラを思わせる美しいトンボでした。
トンボは、武士たちに好まれその後、成功や富、
幸せの象徴としてきものに描かれるようになっていきました。
秋草と同様に浴衣に描かれることも多いですね。

(散歩の途中で見つけた糸トンボ)
 

紗綾形

卍を崩した形の紗綾形は、「卍つなぎ」の柄の一種。きものの地紋に使われることが多く、
菊や梅など様々な吉祥文様と一緒に描かれ、慶事礼装用のきものに用いられてきました。
卍の四隅をつなげ、連続した文様のため、途絶えることなく永久に継続する「不断長久」、
家の繁栄や長寿の祈りが込められました。

何度となく観た、本能寺の変で炎の中で舞う織田信長の白い寝間着。
あれはいつも紗綾形の白い絹だったような気がするんですけど……、
放送中の大河ドラマ「麒麟がくる」ではどんな描かれ方をするのでしょうか……???
紗綾形のお寝間着かどうか? なんてことを今から気にしているのは私だけかもしれません。

さて、ところでなんで卍を連続した文様を「紗綾形」というのでしょうか?
実は、紗綾(さや)は、16世紀の中頃に中国から輸入された織物の名前だったんですね。
「紗」で「綾」ですから確かに織物っぽい……! で、
この紗綾の地紋によく用いられていた文様がこの卍の連続文様だったことから、
紗綾という織物でなくてもこの文様が織り混まれた物を紗綾形というようになったという説が有力です。

 

織田信長の本能寺のあのシーン意外にも、浮世絵に出てくる女性の長襦袢も紗綾形が多いですよね。
きっとたくさん用いられたのではないか? と予想できます。
寝ているときに魂を持っていかれちゃ困りますからね。
身を守る意味でも、強い文様を身にまとったのかも知れません。

振袖の地紋にもとっても多く用いられる紗綾形。
これからのオトナとしての人生を楽しく、健やかで、
幸せに生きていって欲しいという祈りと願いを込めて、紗綾形の地紋にこだわってみるのもありかも?

 

 

水が流れているさまや池に溜まっているさまを図案化した文様で、
弥生時代の銅鐸にも見られるようにたいへん歴史のある文様です。

地球温暖化に伴って最高気温が年々上がっています。
天気予報のお姉さんが「平年並み」とか「平年より高い」などという平年は、
過去30年の平均だそうです。ですから明らかに、
直近30年間に比べて上がっているような気がしますよね。
あ? 若い人は30年も生きてないから分からないね〜〜〜

そんな中、新しい生活様式ではフォーマルでもソシアルでもカジュアルでも、
マスク姿が当たり前の世の中になりました。
ワクチンが開発されるまでは、マスクが当たり前。暑いですよ!!!! 
首から上ばかり汗をかく私。多分この夏はずっと湯上がり姿ですね。(毎年そうだけど)


そうなると……、私じゃなくても熱中症が心配になってきますね。
「水分を補給しましょう」などと盛んに言われる季節がやってきました。
例年以上に水分補給が大切な気がします。
そもそも水は全ての生物にとって必要な物で、縁起の良い文様だとか、
吉祥文だとか言う前にもう、まさに命の源ということです。数多く描かれるわけだ〜!


その昔、「若水」といって特定の泉の水を飲むと若返るという言い伝えがありました。
お正月に若水を汲んで祝う習慣は日本の各地で見られたものです。
涼しげな様子から、水を描いた「波」や「流水」などの文様は、
夏物に用いられることも多いのですが、実際は一年中お召しになって大丈夫。

扇面流しの図や観世水に千鳥など、取り合わせの楽しみが膨らむのも水の文様の特徴かも知れません。
また、島国だからでしょうか? 波の文様も大変多く、岸壁と共に描かれたり、
白波、立浪、荒波、怒濤……と、枚挙にいとまがないほどさまざまな表現がありますね。
それを身に纏うというのもまた自然と共生してきた日本ならではなのでしょうか。

「流水文」は曲がりくねって水が流れる様子を意匠化した文様で
固有の形を持たない水であるがゆえに優美にも勇壮にも表現できます。
また、きもの通に好まれる、茶屋辻文様、御所解文様にも水は描かれ、先日、
さんざん分からないと描いた「かきつばた」にもお約束のように流水と八つ橋が共に描かれます。

先日の、切手趣味週間の「紅白梅図屏風」(尾形光琳)のまん中にも流水が描かれています。
切手だと左右に分かれちゃってるんですけどね(汗)
プロの染師たちの「光琳の流水を描いてちょうだい」と頼めば、
間違いなく全員があの白い梅と紅い梅の間に流れている流水を描くはずです。


また、渦を巻いた水文は「観世水」という固有の名が付けられています。
能楽の観世流宗家が創始したと言われるので、特にそう呼ばれるのです。

水の文様は切りがないほどたくさんありますね。
永遠にブログが終わらないのでこのあたりで終わりにしますが(名残惜しい 笑)

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