このページを編集する

花sakuブログ

衣装に描かれる日本の文様
2020年05月18日

こんにちは。

saku 編集部の大下直子です。
一昨日、カラフルな大河ドラマ「麒麟がくる」の衣装のことをブログに書きました。
賛否両論、さまざまな意見がネット上にあって、今の時代の楽しさかなぁ?とも思っています。
いろんな意見があることを知ることができる。
逆に言うと、言いたいことがあったら世界に向けて誰もが言える時代ということ。
世界中のあちらこちらで、歴史上統制下に置かれていて言いたいことが言えなかった時代がありました。
今も言いたいことが言えない国もあります。
そう思うと、いろいろな意見があることを知ることができる今の時代はすごいなあと思います。

 

アンテナの感度が高すぎると、他人の論争がすごくストレスになったりします。
主体性の高い人は自分とは全く関係の無いたったひと言のつぶやきにも痛みを感じたり傷ついたりします。
また、LINEのやりとりなどでも相手のひと言で一日中気に病んだり、つらかったり……。
でも相手は案外なんとも思っていなかったり……とかね。「ネットあるある」なのかもしれません。
情報の取捨選択やコントロールが生きていく上でとても大事なスキルになってきましたね。
インターネットネイティブの人たちはそれらをとても上手にやっているのでしょう。私は少しシンドイです。


ところで、昔、白黒テレビの画面は角が丸かったんです。
テレビ画面が映るところのことを「ブラウン管」って言ってましたけど、すこ〜し立体的でしたよ。
今、うちにあるテレビも、今ブログを書いているパソコンも画面は真っ平らです。
そして、白黒のテレビでカラー放送を観ているとどこかにカラー放送なんだよ〜っていう印が出る。
そんな時代は衣装の色が知りたくて知りたくて仕方がなかったことでしょうね。
黒沢和子さんが作り出す世界観は、今の時代でよかったですよね。


「麒麟がくる」の衣装の話からいろいろな考察が生まれましたが、
今日はコロナ禍にあって、魔除けなどを含めて縁起の良い文様を少しだけ書いてみようと思います。
文様を書き始めたらたぶん、何文字あっても足りないくらい、
切りが無いことになってしまいますので、本当に少しだけ。

 

応神天皇の時代、それまで木の皮や麻などの天然植物素材をまとっていた日本人が、
呉の国からの使者によって伝えられた絹織物を身につけるようになったのが絹の着物のはじまりです
(私が一番好きな木綿はそれよりもずっとあと)。

 

日本人は、季節が彩あざやかに変化する自然とともに生きる中で、
独自の感性でさまざまな自然を図案化し、着物に写していきました。
コロナ禍の今、「命を守ることが経済よりも大事」と叫ばれています。
その通りだと思います。しかし、「麒麟がくる」の戦国時代をはじめ、
歴史上命よりも大切なものが多かった時代だったからこそ、描かれた柄一つひとつに、
大切な人への深く強い思いや祈りを込めたのかもしれません。


時代考証がどうの、染料的にこの色はこの時代には無かったという声がある
「麒麟がくる」の衣装の世界ですが、
一方で戦国時代の色はもっと派手だったという説もあって、
それらの論争を読んでいると興味深いものがあります。

 

 縁起の良い文様

●桜

日本の象徴的な花、桜。多くのきものに描かれ人々に愛されている桜には、
実は「命を守る」という願いが込められています。
江戸時代には火災が起きたときの避難場所に植えられたり、蛇行した川沿いに植えられました。
避難場所に植えるのは、お花見をすることでいざというときの予行演習になるからです。

また、川沿いの地盤の弱いところは、
人々が花見に訪れることで地面が踏み固められて土地を強くする狙いがありました。
お花見によって土木工事をしちゃったんですね〜〜。そ
んなことから桜は命を守ることの象徴だったのです。
ちなみに、「さくら」の「さ」は、「早苗」「早乙女」の「さ」。
「さくら」の「くら」は、「神楽」「神蔵」の「くら」

私たちの遠い祖先は、神様のよりどころのことを、「さ・くら」と呼びました。

今年のお花見は、「来年も桜は咲く」とグッと我慢の桜でしたが、命を守る桜は今、降り注ぐ初夏の陽射しの下で、キラキラの新緑を輝かせています。

zubotty2045DSC_4682_TP_V4.jpg

 

 

●桐竹鳳凰

中国から伝えられた桐竹鳳凰紋。鳳凰は桐の木に棲み、竹の実を食べたと伝えられています。
鳳凰は、世の中を変えるほどの名君が出現したときに飛んでくると言われており、
富や名声、成功を祈る吉祥文様です。身近なところでは、
賞状に描かれている柄やお神輿の上の飾り、天皇の夏冬の御袍(ごほう)に用いられています。
個人的には、「鳳凰」は夢中で読んだ手塚治虫さんの『火の鳥』と重なっています。

 

お〜い! 鳳凰、早く飛んで来〜〜〜い!

 

 

●梅

歴史の中では、桜よりも先に梅が尊ばれました。頭が良くなる、清いものとして捉えられていました。
また、梅には殺菌性や百薬の長としての性質があるとされ、かつて梅は薬だったのです。
華美にならず、凛と咲く清いイメージや品性は、そのまま人柄を表すきものの柄として定着しました。

ダウンコートを着ていた頃に始まったコロナ禍。コートを脱ぎ捨て、徐々に季節は半袖一枚の初夏へ。
そう、梅仕事の季節がそろそろやってきます。殺菌性や百薬の長ですから、まさにやらないわけには参りません。去年の梅酒はゼリーにしてみました。
自宅マンションのエンタランスから青紅葉を少々拝借!
これが……意外に酔うので昼間は注意(笑)

IMG_2683.JPG


●松

防風林として使われることが多い松。実は私が住んでいる千葉県市川市の「市の木」は松なのです。
そして自宅からはあちらこちらに傾いた松の木が見えます。
松の木は、市に無断で切ってはいけないんです。樹齢の長い松の木はどれも傾いています。
JR総武線の線路のあたりがその昔海岸線だったのだとか。
江戸時代からどんどん埋め立てが進みましたが、市川市の古い松の木が傾いているのは防風林だったから。

松は神が降りる木とされてきました。生命力が強く、冬になっても緑色。
いざというときは松明として活用できるため、お城のまわりにも植えられることが多かったのです。
松の強さ、生命力、神が降りる木としての神聖さが好まれ、
黒留袖や袋帯などおめでたいときに着る着物にも多く描かれてきました。
私はお正月に、熊谷好博子(くまがいこうはくし)の塩瀬の帯を割とよく締めています (ボロボロです)。
暖かい結城紬などを着て過ごすことが多いので、昔
の人は知っている……「京都大原三千院〜♪」で始まる『女ひとり』のあの歌詞を(笑)

そして『花saku7月号で特集する、人生の通過儀礼に匹敵する格の高い装いのときは松の袋帯。 
松は、厄除けにもお祝いにも万能です。

IMG_47772.jpeg


松とくれば次はもう、竹ですが、長くなってしまったので続きはまたにしますね。
無駄話が多いからいくらも進みゃぁあしない。


◆◆◆ 和の生活マガジン『花saku』5月号ご購入ご希望の方はこちらからどうぞ ◆◆◆     
⇒ saku ON LINE 


◆◆◆ 和の生活マガジン『花saku』の購読お申し込みご希望の方はこちらからどうぞ ◆◆◆  
⇒ saku ON LINE 

タグ: 着物  文様  縁起が良い